神喰 〜天界の血戦〜

文化祭二日目、打ち上げ、その二時間前
私は思考していた
周りではいなほ杯なるものの発表に声をあげる学生たち
歓喜と悲哀が渦巻く中、私は思考を止めなかった
いや、止めることが出来なかったというべきか

打ち上げに『あれ』が 来るーーーーーーー


正確に来ると決まったわけではない
しかし『それ』は必ず来る

【『それ』は矛盾の上に立ち、私たちを見下ろしてくる】

その事を考えると吐き気に似た形容しがたい感情が私を
襲うのだ
吐き気からの逃げ道を探すために私は自然と後夜祭へ足を運んでいた
思考を止めたら吐き気に喰われてしまいそうな気がして

【『それ』は全能である
全能が故に人は『それ』を畏怖する】

『それ』を撒くという結論に至るまでそう時間はかからなかった
ただその事を実行に移すこと、移そうとすること自体が極めて罪深く、私を罰で蝕む

【『それ』は道であり地平である
付いてくるのではない、私たちがそこにいるのだ】

汗が込み上げる
しかし前に進むしかない

生きるために神を欺くのだ
罪を打ち崩し、罰を穿つのだ

【私たちが話したのではない
『それ』が聞いたのだ】

実行する
しかし二人、(仮に平澤と宮下とする)が『それ』に食われる
二人を見捨てないほど私は『それ』を甘くは見ていなかった
瞬時に決断する
二人を切り捨て、ボーノイタリアーノへ向かう、と

偽善と慢心を足場に走る、『それ』から逃げる
距離にして20m
そして『それ』と二人と私たち10数人を横断歩道が切り裂く
思いがけない僥倖
私は対岸から歓喜に満ちた表情で『それ』を見る

瞬間、戦慄

『それ』が走り去る
駅とは全くの別方向へと
そして全てを理解する
何を理解したかはわからない、ただ理解した、という感情と共に罰が私を蝕む

そして私は気絶した
意識が10月の夜空に溶ける、刹那
確かに聞いた














『逃がさない』

















【『神』は七日間で世界を作り、一日で世界を滅ぼした】